コラム

手をつけられなかった家と残された想い

 

親御様が亡くなり、突然相続と向き合わなくてはならなくなった時。

気持ちの整理も心の準備も追いつかないまま、
実家のドアを開けることになる方は少なくありません。

 

部屋は昔のまま。懐かしい匂いも記憶のまま。時間が止まったように静かで、
積み上がった物のひとつひとつが、かつての暮らしを蘇らせます。

 

歳を重ねれば、誰しも若いころのようには動けなくなります。
家事が追い付かない、物が少しずつ溜まっていく。
ほかの人から見れば“いらないもの”でも、
本人にとっては大切な思い出と繋がっていて捨てられない。
そんな日々の中で、気づけば家の状態が手に負えなくなることもあります。

 

でも、その物を手放せないのは、決して怠慢ではありません。
思い出があるからこそ、手をつけられなかったのです。

 

その家を目の前にして「どうすればいいんだろう」と
戸惑うあなたの胸は、重くて当然です。
しかし、どうか覚えておいてください。
その家の未来は、今もまだ、あなたが選べるのです。

 

そして、家と向き合う時に
ひとりで抱え込まなくていいことが、もう一つあります。

家の中を完璧に片付けてから売らなければならない

そんな決まりは(どこにも)ありません。

生活の名残が残ったままの家。

物が多くて手のつけられない家。

遺品整理が追い付いていない家。

実は、そのままの状態で売買されるケースは珍しくありません。

 

家を手放すという決断は、
気持ちの整理と同じで、
少しずつでいいのです。

「全部きれいにしなきゃ」
「片付けてからじゃないと恥ずかしくて相談できない」

そんなふうに気負わなくて大丈夫です。

 

あなたがどんな状態の家を抱えていても、
そのままの今を持ってきてくれれば、一緒に考えればいいのです。

家と人の時間に寄り添いながら、
あなたやご家族が前に進める方法を、無理なく丁寧に探していきましょう。

 

たねむら不動産
寺本